前頁で、wikipediaのカテゴリー「ヨーロッパの伝説の生物」(ヨーロッパにおける、神話・伝説の生き物に関するカテゴリ)をざっと見た(✳)が、ここではキリスト教美術からみる。
ビショップ・フィッシュ
ベヒモス
その下位カテゴリー
キリスト教の悪魔
キリスト教の天使
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イェグディエル、
ウリエル、、
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サキエル
サラフィエル、
バラキエル (大天使)、
ミカエル、
ラファエル、ルシファー
記録天使、
座天使、熾天使、
ハニエル、
メタトロン、
堕天使
サキュバス (夢魔)
サタン
大淫婦バビロン
バフォメット
ベルゼブブ
黙示録の獣
レヴィアタン
英版ではこれとは多少別視点のカテゴリーがあるようだが、非クリスチャンにはなじみが薄い‥
(20200421閲覧)
Category:Christian legendary creatures
(下位2カテゴリー)
Apocalypse - characters 、Demons in Christianity
Category:Apocalypse - characters 21
Beasts of Revelation
24 Elders of the Apocalypse
Abaddon
Angels of the Apocalypse
Antichrist
Saint Antipas of Pergamum
Beast from the bottomless pit
Beast from the Earth (
Beast from the sea
Beasts of Revelation
Four Horsemen of the Apocalypse
Four Living Creatures
Gog and Magog
Lamb with seven horns and seven eyes
Lion of Judah
Locusts of Apocalypse
Prochorus
Red Dragon of Apocalypse
→黙示録の怪物(ドラゴン)
Two witnesses
Whore of Babylon
Demons in Christianity 10
「修道士の服を着た怪物」
『動物シンボル事典』p198 セイウチ(海の修道士、海坊主)
ギヨーム・ロンドレ『海の魚ついて』(1558)
「獣」(名前のない怪物)
『動物シンボル事典』p358
デューラ-の版画(1495‐1500)
「怪物のいくつもある長い首は蛇のようで、人を嘲笑するような頭を持っている。」
黙示録のこの怪物は。14‐15世紀にかけて最もその名をはせることになった。
アンジュー伯のタピストリー:ニコラ・バタイユ作(1377‐1382)は、
サン・スヴェールの「黙示録」の怪物(11世紀)とは異となって、聖ヨハネの描写したとおりに作られた。
R・ヴィルヌ-ブは、その『美術の中の悪魔』で 、「ルネッサンス期のフランスとドイツの美術は、古代ギリシアの想像力がアッシリアのそれと交雑して生まれてきた獣、七つの頭を持つヒュドラ―のイメージに取りつかれていた。」
「あれほど多くこの怪物が描かれたのは、おそらく14世紀末の占星術師たちが、反キリストの地上への到来を1524年と定めたことにもよるに違いないいない。(ジャン・ポール・クレベール『動物シンボル事典』p338)
wikipediaのカテゴリー(+「動物シンボル事典」)から見るのはここまでとして、マンフレート・ルルカーの『聖書象徴事典』と、『西洋シンボル事典–キリスト教美術の記号とシンボル–』(ゲルト・ハインツ・モア)を見てみよう。
(四つの)生き物
一角獣
怪物(龍)
ケルビム
(獅子)
セラフィム
(蛇)
龍に対する勝利はキリスト教美術の好みの主題で、その結果、龍は大天使ミカエル、聖ゲオルギウス並びにマルガレータの象徴的付属物の一つとなった。(p394『聖書象徴事典』)
『西洋シンボル事典–キリスト教美術の記号とシンボル–』
(ゲルト・ハインツ・モア 八坂書房2003)
サタン(悪魔)p3
バシリスク p244
キマイラ p88
デーモン p217
竜 p331
一角獣 (Einhorn) p24‐26
エロース(アモール、ゲニウス) p43
フォルトーナ p262
グリフィン p108
ケンタウロス p114
(獅子)p142
(蛇)p272
セイレーン p183
スフィンクス p179
テトラモルフ(四形態) p214
Heinz-Mohrs Lexikon der Symbole.
Bilder und Zeichen der christlichen Kunst (1971)
※ゲルト・ハインツ・モア Gerd Heinz-Mohr (1913-1989)
ここからは、 上記『西洋シンボル事典–キリスト教美術の記号とシンボル–』に挙げられた空想動物項目から一角獣の遺物を見よう。 掲載の図は2つだけだが、その他にたくさん挙げられているので検索する。
図41(p25) 捕獲された一角獣 、トゥレーヌ地方のタピスリー
1500年ごろ、メトロポリタン美術館:Metropolitan Museum of Art
(※Tapestryタペストリー(英語)フランス語では(tapisserie)タピスリー
)
図42(p25)恋人たちと寓話の動物たちがいるタピスリー、
15世紀前半、ベルリン工芸美術館:Berlin State Museums、
the Kunstgewerbemuseum Berlin を
探したが、どうやらクリュニー美術館収蔵となったもののようだ?
Französischer Tapisseur (フランスの布張り職人)による16世紀初頭の作品になっている。
ガブリエルの一角獣狩り
大天使ガブリエルによる一角獣狩りは、数多くのタピストりやミニアチュール、またカンのサン・ルニョベールの柱頭に見られるように、マリアによる幼児キリストの無垢受胎の象徴となった。(p25)
ここに、まず、カンのサン・ルニョベールとあるのが不明(-_-;) サン・ルノベール礼拝堂?置いておきます。
マルティン・ショーンガウアー作とされる2枚の板絵
15世紀、コルマール美術館 Musée Unterlinden
・・@フランス東部で
「イーゼンハイムの祭壇画」がある美術館
※Martin Schongauer(1445頃-1491)は、 アルザス地方コルマール生ドイツ人
ニコラ・フロマンス、1457年、サン・ソヴェール大聖堂、エクス・アン・プロヴァンス(南仏)
Aix Cathedral (French: Cathédrale Saint-Sauveur d'Aix-en-Provence)
Kreuzgang der Kathedrale Saint-Sauveur in Aix-en-Provence
見てみたがこれも詳細はよくわからないので、この聖堂の回廊の柱頭イメージを選んで挙げておきます。
MerseburgerDom Bischofskapelle Hortus conclusus
Merseburger Dom, Westwand der Bischofskapelle, Temperagemälde von 1518, das den Hortus conclusus darstellt
16世紀の逸名の作者たちによる祭殿、マリーエン教会、リューベック、エアフルトの大聖堂、メルゼブルクの大聖堂Merseburg Cathedral、ワイマール美術館Weimar、ブラウンシュヴァイク美術館Braunschweig
彫刻祭壇、15世紀、ザンクト・エリザベート、ヴロツワク(ブレスラウ)
トゥレーヌ地方のタピスリー、15世紀、メトロポリタン美術館ザ・クロイスターズ別館、ニューヨーク(図41)
織物のアンテペンディウムantependium、15世紀、マリーエン教会、ゲルトハウゼン/ヘッセン
L
esepulttuch mit Einhornjagd und Hortus conclusus aus dem Benediktinerinnenkloster Ebstorf
Date Ende 15. Jh.
Stefan Lochner Madonna im Rosenhag
マリア予型論における役割
純潔な者の中でも最も純潔な者であるキリスト自身のシンボルとしての一角獣
しばしば神の「ひとり」子に関する語呂合わせとして登場する。
「一本の角を持つものは正しい。とりわけ一本の角で戦うようにその十字架で敵と戦うイエス・キリストは正しい。この角の中にわれわれの確信が宿っているのだ。」(ヨーアンネース・クリュソストモスの名で伝わる典礼の書)
このように一角獣が重要視されるようになったのは聖書翻訳の誤りにある。(一角獣と訳されたのは、一角獣はキリストの十字架の前に跪くが、これは以前アッシリアのフリーズにおいて、太陽に跪いて敬意を表していたのと類似している。(p26)
一角獣がその角のために国王の司法の象徴となるのは、角によって罪人たちを滅ぼすからであって、このようにしてそれは紋章の図柄を飾る動物となる。(イギリス)
Frammenti di mosaico pavimentale
怪物(龍) とセイレーンの項も詳しく見たいが、ページを改めることにし、ここからは、 マンフレート・ルルカーの『聖書象徴事典』の主な空想動物項目(7ピックアップ)からの一角獣を見よう。
ヨーロッパでもっとも広く流布している空想上の生き物は一角獣である。(p33)
キリスト教以前の一角獣の痕跡は、アタルヴァ・ヴェーダ讃歌に既に登場している。(角を持つ魚:海の一角獣)
イランの伝承では、悪魔の支配を打ち破る力を象徴的に表している。
一角獣という呼び名はヘブライ語からの不正確翻訳によって聖書に入った。野牛の一種を、七十人訳ギリシア語旧約聖書ではmonokeros、ラテン語訳ではunicornisと訳された。
旧約聖書では悪しきものとしても良きものとしても顕現しうる強力な力を象徴している。
教父たちによって一角獣はキリスト教の象徴体系の中に導入された。「キリストは一角獣と同じようにあらゆる国々国の上に一つの支配を打ち立てるだろう」
一角獣と乙女
図p34 クリュードフ詩編より(9世紀)
(※クリュードフ詩編とは、不明)
一角獣のモチーフ伝播したのには民衆本『フィシオロゴス』のラテン語訳が与(あずか)って大きな力があった。
(この伝説により、) 一角獣は、正常と純潔を表わすものとしてマリア象徴の一つとなった。更に、その角で蛇によって混ぜられた水を浄化するといわれ、ために、世界をその罪から浄め救済するキリストの象徴にもなる。11、12世紀の司教杖の握りに見られる一角獣はキリストの象徴と解される。(p34)
、セイレーン の項は、
→以下のページsiren.htmlに続く。
怪物関連書(まとめ)
「《驚異》の文化史」(オトラント大聖堂のモザイク他)
『ロマネスクの図像学 (教会の怪物)』、
『イタリア古寺巡礼』(アダムと動物)、
『怪物ーイメージの解読 』、
『奇想図譜』
LastModified: 2020年 …