『魔女・怪物・天変地異 近代的精神はどこから生まれたか』 黒川正剛 著(筑摩書房2018)の目次読書は⇒こちらですが、ここでは怪物自体と掲載の図を、シンボル事典などを参照しながら、もう少し丁寧に展開・チェックしてみします。
マンティコール(マンティコア)#manticore
アルゴス(海の怪物)#cartamarina
マンドラゴラ#mandragora
スキタイの仔羊<
バーナクル・ギース
スー
七頭のドラゴン
、「第一章」。扉絵は、[マンテイコラ」とありますが、『動物シンボル事典』での表記は
「マンティコール」(フランス語manticore/manduce,英語manticole),Wikipediaでは「マンティコア」
Manticore illustration from "The History of Four-footed Beasts" (1607)
by Edward Topsell
エドワード・トプセル著『四足獣の歴史』(1658)より、というキャプション。
1~3章扉絵の出典はErnest&Johannna Lehner,Monster and Dragon,Dover Publications,Inc,2005/
Edward Topsell(circa 1572 –1625)en.wikipedia
https://uh.edu/engines/epi1586.html
1262年 ブルネット・ラティ
「顔は人間で血色をしており、目は黄色く、体はライオン、尾はさそり、ものすごいスピードで駆けるけるので、いかなる動物もその手からは逃れられない。だがこやつの好むのは、中でも人間の肉なのである。」
ラティーニ、ブルネット(1230?-1294)https://gallica.bnf.fr/
だからこれは、かみ砕いて食べること(その意味のmanducationからmanduceという名がでている)の特異な人食いの怪物であり、狼やら熊やらライオンの体をしたケルト伝説のさまざまな怪獣を思い起こさせる。
これらの怪獣に食われて、あわれな人間がその口の尖った歯のあいだから、まず頭だけ出している図はよく見るところである。
建物の柱頭の装飾に使う幻獣の中に、あえてこの怪物を登場させた中世という時代にあっては、これがその蠍のような尾を体の上に突き出して、前方に鋭い有毒の矢を何本も放ち、相手を殺すのだとまことしやかに語られていた。その矢は信じがたいほどの距離を飛んだという。
人間の肉を最も好むマンティコール
(図版所蔵 Bibliothèque Nationale,Paris)
(フランス国立図書館略称:BnF)
第一章の図1(p043)は
ハルトマン・シェ―デル著『年代記』(1493)の「東方の驚異」の異形の種族に関する挿絵
図2(p050)
ゼバスチャン・ミュンスター著『普遍的宇宙史』(1554) 「東方の驚異」の異形の種族に関わる挿絵。
「文中にプリニウス(Plinius)の表記が見える。
プリニウスの『博物誌』は近世にいたるまで大きな影響を与えた。」
※京都外語大学付属図書館のデータ kufs.ac.jp
第二章の扉絵は「海の怪物アルゴス」オラウス・マグヌス著『ゲルマン海の怪物』(1537年)より
Olaus Magnus(1490 - 1558)wikipedia
Carta marina(16世紀作成の北欧の海図 wikipedia)
Carta marina et descriptio septemtrionalium terrarum ac mirabilium rerum in eis ... Magnus、Olaus(1490-1557)
地図の一部
第二章 図6(p080)
第二章 図9(p089)
図11(p094)
図12(p095)
図13(p097)
図14(p098)
図15(p099)
図16(p107)
図17(p120)
図21(p125)
・・・これらは実在の動植物にあたるようだ・・
第二章 図4(p076)シモン・グリナエウス編『古代人に知られていなかった地域と島々の新世界』1532年より。ハンス・ホルバイン(子)による「普遍的宇宙誌図」。地図周辺の装飾には胡椒などの異境の植物、食人種などの異形の種族、また海には様々な怪物が描かれている。
※シモン・グリナエウス(Simone Grynaeus 1493-1494)ドイツ(wikipedia)
第二章 図5(p079)「マンドラゴラ」の図。ヨーハン・シェーンスベルガー『植物標本集』1485年頃
※ヨーハン・シェーンスペルガー Johann Schönsperger(?-1523?)
→マンドラゴラ:他の文献『魔女の薬草』などから見る
第二章 図7(p084)「スキタイの仔羊」の図。
クロード・デュレ著『自然における驚異的かつ奇蹟的な植物と薬草に関する驚くべき話』(1605年)より。
植物が成長して動物に変成するという奇妙奇天烈な話。
(スキタイの子羊:バロメッツ)茎上で生育する羊毛をまとった生き物(p083)
『幻想博物誌』(澁澤龍彦)※
植物から生ずる羊の話:
「17世紀初めの植物学者:クロード・デュレの『驚嘆すべき植物譚』。「バーナクル・ギース」
この説明は少し間違っていたようです。クロード・デュレは植物学者ではなくて、「仏蘭西のムランの下級裁判所の裁判長で様々な領域に関心(好奇心)を持つ人物」
第二章 図8(p085)「バーナクル・ギース」の図。『動物寓話集』13世紀前半より。
第二章 図10(p090)「スー」の図。
アンドレ・テヴェ著『南極フランス異聞』1557年より
16背英気後半のテヴェは近代合理主義者の先駆けか。(p104)
奇形を「自然の不幸な出来事」と「自然の欠陥」と位置付ける。
「スー] は初見であった。人面に見えるがオナガザルのようにも見える・・
検索(補遺)
https://www.minpaku.ac.jp/:山中由里子PDF
”驚異を「見る」”にアンドレ・テヴェの著からの図があり。(直接の関連はない)
第二章 図18(p121)「海の怪物」の図。アンブロワース・パレの1582年刊行のラテン語版全集より。
第二章 図19(p122)「オガ」の図。アンブロワース・パレの1598年刊行のフランス語版全集より。
虚偽を含んだ間接的な情報・伝聞情報が「真実と現実」に変成していくのがこの時代の状態であった。(p123)
第二章 図20(p124)
http://www.ac.cyberhome.ne.jp/~naturalis/の図。
アンブロワース・パレ著『怪物と驚異について」1585)より。
以上の図はアンブロワース・パレ著 からであった。→この人物については、別にまとめページを作成したい。
Parabolae sive similitudines (画像検索)
Hydra from Prodigiorum ac ostentorum chronicon (1557).
第三章 図22(p130)「教皇驢馬」
プロテスタントのパンフレット「二体の忌まわしき像の解釈」ルターとフィリップ・メンヒルトン(1523)に掲載されたルカス・クラナッハ(父)の木版画(図23も)
第三章 図23(p130)「修道士仔牛」 ルカス・クラナッハ(父)
第三章 図24(p134)「戦う教会』(チラシ)1569
修道士ヨハンネス・ナスス(1569バイエルン)作
図22・23は・・カトリック教会攻撃
図24はプロテスタント攻撃(プロテスタント地域の怪物誕生に関するもの)(p133)
第三章 図29(p142)デューラー作「ランツァーの怪物的な豚」1496年頃
第三章 図30(p152)ラヴェンナの怪物の図、アンブロワーズ・パレの1614年刊行フランス語版全集より
澁澤龍彦https://books.google.co.jp/第四章の扉絵は、怪物でなく、「魔法にかけられた馬丁」ハンス・バルドゥイング・グリーン作(1544年頃)
出典:Hans Baldung Grien:Prints & Drawings,Exhibirion Organized and Catalogue Edited by James H.Marrow & Alan Shestack with Three Essays on Baldun and His ART byAlan Shestack・・,Yale University Art Callery,1981
※(wikipedia)(Hans Baldung Grien/Grün, 1484?1485?-1545)
「デューラーのもっともすぐれた弟子と考えられている」
第四章 図39(p217)「好奇心」チェ―ザレ・リーパ
以上、 『魔女・怪物・天変地異 近代的精神はどこから生まれたか』
黒川正剛 著(筑摩書房2018)の怪物自体と掲載の図を、チェックしました。(4章の魔女関連は割愛)
→「目次読書はこちらに戻る。
怪物(まとめ)
「《驚異》の文化史」(オトラント大聖堂のモザイク他)
『ロマネスクの図像学 (教会の怪物)』、
『イタリア古寺巡礼』(アダムと動物)、
『怪物ーイメージの解読 』、
『奇想図譜』
LastModified: 2020年 …