ヒンドゥー文化圏の蛇


ナーガ 蛇王(インド神話) 

ナーガ

ナーガ
平凡社世界大百科事典(上村 勝彦)から要約すると

ヒンドゥー教の神名。
〈竜〉と漢訳されたが,本来は中国の竜とは異なり,
蛇,とくにコブラのことである。
蛇神崇拝はすでにインダス文明において存在したと推測される。
アーリヤ人は古来より行われた蛇神崇拝をしだいに受け入れ,
半神の一つとみなすようになった。
ヒンドゥー教の文献では,
ナーガすなわち蛇族は, パーターラと呼ばれる地底界に住むとされる。
バースキその他の竜王がその世界を統治している。
パーターラの最下層に原初の蛇 (アーディ・シェーシャ) アナンタAnantaが住み,
その頭で全世界の重みを支えている。
ナーガはしばしば人間の姿で文学作品に登場し,
竜の娘は非常に美しい容姿をしているとされた。
ナーガは仏典においてもよく言及され,
天竜八部衆の一つである。
同じく八部衆に属する摩順羅伽 (マホーラガ) は大蛇のことであるが, ニシキヘビなどの大蛇を指すようである。

平凡社世界大百科事典 定方 里
八部衆 はちぶしゅう
釈梼に教化され仏法を守護する 8 種の下級神の総称。大乗経典に仏の説法の聴衆として登場する。
天竜八部衆ともいう。
(1)天 (デーバdeva)  神のことで (deva はラテン語 deus と同系), 帝釈天をはじめとする三十三天など。
(2)竜 (ナーガn´ga)  水辺にいて降雨などをつかさどる。その居所は竜宮と呼ばれる。インドの美術ではコブラまたはコブラを頭につけた人間の姿で表される。
(3)夜叉,薬叉 (ヤクシャyakoa)  森の神として福神と鬼神の両面をもつ。 夜叉女 (ヤクシー,ヤクシニー) は多く豊満な裸女で表され,毘沙門天の部下とされる。
(4)乾闥婆 (けんだつば)(ガンダルバgandharva)  帝釈天に仕える音楽神で香 (ガンダ gandha) を食べて生きるとされ,ギリシア神話のケンタウロスとの関係も指摘されている。
(5)阿修羅(アスラasura)  天に敵対するとされる乱暴な神。 非天と訳されることもある。
(6)梼楼羅(ガルダgarufa)  鷲が神格化されたもの。 金翅鳥 (こんじちよう)とも訳され,竜のライバル。人間の肢体に鳥の頭,翼,爪をもったガルダの図が中国のベゼクリク石窟にある。
(7)緊那羅 (キンナラkiknara)  歌舞神で,半人半鳥または半人半馬の姿で表される。これが半人半獣 (鳥) の神と表されるのは,キンナラが〈人か否か〉を意味するからである。
(8)摩順羅伽 (まごらが)(マホーラガMahoraga)  〈大蛇〉の意の神で,楽神とされる。
またこれとは別に,四天王の配下とされる八部衆がある。

(1) 乾闥婆,
(2)毘舎闍 (ぴしやじや)(ピシャーチャ),
(3)鳩槃荼 (くはんだ)(クンバーンダ),
(4)薛茘多 (へいれいた)(プレータ),
(5) 竜,(6)富単那 (ふたんな)(プータナー),
(7) 夜叉,
(8)羅刹(ラークシャサR´koasa)。
このうち (2) と (8) は食人鬼の一種。 (3) は〈甕のような睾丸をもつもの〉を意味し,象皮病患者のイメージに基づくと考えられる神。 (4) は餓鬼のこと。 (6) は餓鬼の仲間で熱病鬼とされる。
平凡社世界大百科事典 定方 里

二十八部衆 にじゅうはちぶしゅう
千手観音の眷属で,千手観音を信仰するものを守る二十八部の護法善神。千手観音二十八部衆,観音二十八部衆などともいう。唐の伽梵達摩訳《千手千眼観世音菩醍広大円満無礙大悲心陀羅尼経》,唐の善無畏訳《千手観音造次第法儀軌》などに説かれているが,二十八の名称については諸経に多少の差がある。

現存作例の中で最も著名な京都蓮華王院 (三十三間堂) 像を例示すると,
(1) 密迹 (みつしやく) 金剛力士,
(2) 摩醯首羅 (まけいしゆら) 王,
(3) 那羅延堅固 (ならえんけんご) 王,
(4) 金毘羅 (こんぴら) 王,(※)
(5) 満善車 (まんぜんしや) 王,
(6) 摩和羅 (まわら) 王,
(7) 畢婆梼羅 (ひつぱから) 王,
(8) 五部浄 (ごぶじよう),
(9) 帝釈天,
(10) 大弁功徳 (だいべんくどく) 天,
(11) 東方天,
(12) 神母 (じんも) 天,
(13) 毘楼勒叉 (びるろくしや) 天王,
(14) 毘楼博叉 (びるばくしや) 天王,
(15) 毘沙門天王,
(16) 金色孔雀王,(※)
(17) 婆藪 (ばすう) 仙人,
(18) 散脂 (さんし) 大将,
(19) 難陀 (なんだ) 竜王,
(20) 沙梼羅 (さから) 竜王,
(21) 阿修羅王,
(22) 乾闥婆 (けんだつば) 王,
(23) 梼楼羅(かるら) 王,(※)
(24) 緊那羅 (きんなら) 王,(※)
(25) 摩順羅伽 (まごらか) 王,
(26) 大梵天王,
(27) 金大王,
(28) 満仙王とあり,
さらに雷神と風神を加えて 30 尊により構成されている。
画像では京都慈照院に二十八部衆像 (2 幅,重要文化財) があり,これにも風神・雷神が描き加えられている。 関口 正之

※→立川武蔵さんの『聖なる幻獣』第2章マカラと金毘羅


遺された文物をWEBで見る
ナーガ上の仏陀
 カンボジア・アンコールトム (東京国立博物館蔵
アンコール・ワット「The MOAI」
 12世紀初め 蛇神ナーガ(欄干の端には必ずナーガがある)
アンコール・トム 南大門Cambodia
ジャワ島14世紀の東ジャワ「ナーガ(蛇)堂」
ナーガ(Syoukenさんの旅日記)
想い出がいっぱい カンボジア旅行記リンク集
□Wikipedia天龍八部衆

立川武蔵さんの『聖なる幻獣』第5章 翼のある獣


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補遺**ナーガ族


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