唐草図鑑バナー

美術様式論


リーグル美術様式論―装飾史の基本問題」
長広敏雄訳 岩崎美術社、1970新版)

リーグル(ギリシア美術における植物文様)

古ボイオティア様式━アッチカ初期様式 Boeotia style


ボイオティアの下調べ

me2015-09-22  Wikipedia項目
ボイオーティア「ギリシア神話において、ボイオーティアは重要な役を演じている。軍事的拠点として、カドモスが建国した軍事的拠点テーバイ、進取的な商業都市として、ミニュアース人 (Minyans) の住むオルコメノスという伝説の2つの中心地を持っていた。」

ボイオティアは紀元前700年頃のヘシオドスの生地Wikipedia

「美術様式論」p194

ベーラウ:Arch.Jahrb,1888 S,325ff;ボィオティア陶器=孤立的な地方性(ローカルカラ)ーに染められた製作品、幾何学的装飾とパルメットに関係づかられる「生き生きとした植物」
ロータス・蕾文様帯がミケネ風の波状帯線と曖昧に混同している


Joh.Böhlau(1861-1941)ドイツ考古学研究所

「美術様式論」p196

80図 古ボイオティア式陶鉢

波状唐草は鉢の周囲を軽快かつ正確に取巻き、その地間にはエジプト風に(だからクラソネの半パルメット風ではなく)、充填用の花を挿入する。
しかも結果的には充填用の花文様はかろうじて渦文と均衡を保っている。
この充填用の花文様の下に少なくとも半円形的に閉ざすモチーフがなおフルトヴェングレル・レシュケ)のいわゆるミケネ陶壺様式のパルメットの型を保有している(50図)

フルトベングラーFurtwängler(1853- 1907)
※レシュケReszke(?)

注目すべきはただ結束帯のみであって、これにより、すべての渦線の枝別れと連続波状線が結びつくのである

「美術様式論」p197

81図 古ボイオティア式陶鉢

中の帯圏の左方・・茎が基底から上縁まで伸びあがり、そこで曲がって二つに分岐し、それが結束帯で結ばれ、先端は渦文となり、この渦文は一つのパルメット扇形の萼の役をする
右方に伸びた渦線は、更に一つの渦線を下へ送り出し、それが第二のものとともに再び萼を形作るが、場所が足りないのでトゲほどの芽を地間充填する

この渦線は更に一つの渦線を右上に送りだし、これが萼となって、またパルメットを支える。

80z80図では明確でよ調和的にさらお終焉をめぐっていたのに対し、81図では、パルメットが主役であって、渦文が単なる偶然的な唐草結合の役目をしているにすぎない
だが、ギリシア植物唐草文様の発展にとって、波状唐草が縁飾り的な帯形式から解放され独立的な枝別れとして自由に描かれたのは、これが初めてである。これこそがギリシア唐草文様法の独自な目的であったのだ。

この見地から見るとたいして美しくない81図の唐草文様が、歴史的には75図のモチーフ以上に意味を持つ。帯形式に閉じ込められていた文様の達した形式美の意味の終着点である。

「美術様式論」p198


82図 後期ボイオティア陶器の常春藤唐草 
テーベのカビリオン聖地で発見 大部分は連続波状文を描いた陶器片

ウィンネフェルドWinnefeldによれば、ボィオティア産で前4世紀より以前ではないという
古ボィオティアの陶壺(ベーラウによれば前7世紀)とその間の数世紀の間に、連続波状唐草は、ギリシア美術の普通に用いられた縁飾り装飾となった。
(地方的ボイオティア陶壺文様の特色:)


「美術様式論」p199

カビリオン陶壺において、連続波状の図形が極めて優勢なること、 ミケネ美術で既に広く用いられていた常春藤の葉文様の主役的な役割、 「他の陶壺に常套的に用いられる雷文やパルメットや卵飾や放射線のモチーフ」が欠けていること
=古い伝統をそのまま再現している地方的デザイン

常春藤の葉について:私は自然の常春藤の葉を考えたのではない
それは、パルメットの名称について、パルム(棕櫚シュロ)を考えたのでなかったのと同じ。
それはあるひとつの装飾形式を理解する一手段に他ならない。

常春藤の葉はエジプトにおいて発見され、次にミケネでも発見されている。またいわゆるカルキディア陶壺にもあり、前4世紀のボイオティアにもある。
ウインネフェルドの著書の「葉」を、植物学上のTamus Creticaの種なりという説を確信することはできない。むしろ、純様式的な形成とみたい。

「美術様式論」p200

ベーラウのいわゆる初期アッチカ陶壺(Arch.Jahrb.1887 S.33ff., Taf.3--5)は、植物文様発展の問題に関しては、メロスの陶壺より劣っている。

meリーグルのアッチカ初期様式の話はここまでで 短いので、ここで、このあたりにも関係する 「ギリシアの暗黒時代」というのは今はどういう解釈になっているのか、おさらいします。
新石器時代、青銅器時代:古代ギリシアの歴史(前1200年のカタストロフ)
地名もチェック:(環エーゲ海地図

meなるほど。
さらにWikipedia:Pottery of ancient Greeceをみることにします。
(Minoan pottery, Minyan ware, Mycenaean pottery and Sub-Mycenaean pottery、)Protogeometric styles、Geometric style、
(Orientalizing style、Black figure、Red figure、White ground technique、Hellenistic period)

葬祭アンフォラ

Dipylon amphora

Dypilon vase
Dipylon Master

known as Dipylon amphora
Athenian funerary amphora, Late geometric I.
The main scene shows the prothesis and mourning for the dead. Over the bier is the shroud. Men, women and a child lament with the hands on their heads in the usual mourning gesture.
between circa 760 and circa 750 BC Medium silhouette on terracotta Dimensions Height: 155 cm (61 in). Current location (Inventory)National Archaeological Museum, Athens

meこれが男女の別ありという把手の取り付け位置ですね

Hirschfeld Krater

0020MAN-Room2
Untitled known as Hirschfeld Krater
Attic late geometric krater depicting ekphora, the act of carrying a body to its grave.
between circa 750 and circa 735 BC
Medium silhouette on terracotta Current location (Inventory)National Archaeological Museum, Athens

「古代ギリシア遺跡事典」 周藤芳幸・澤田典子 2004年 東京堂出版 「ギリシア美術紀行」 福部信敏 1987年 時事通信社 「世界美術大全集3 エーゲ海とギリシア・アルカイック」 1997年 小学館 「世界美術大全集4 ギリシア・クラシックとヘレニズム」 1995年 小学館

NEXT: 6 唐草蔓絡み文様
BACK: 4 ロードス様式

リーグル美術様式論 目次


△ PageTop


唐草図鑑ロゴ

INDEX アカンサス ツタ ロータス ブドウ ボタン ナツメヤシ
唐草図鑑
目次
文様の根源
聖樹聖樹文様
文献
用語
MAIL
サイトマップ