唐草図鑑
聖樹聖獣文様

西洋中世初期の美術

サン・マリア・デ・リポール修道院
(Santa_Maria_de_Ripoll)

 

エミール・マールの『ロマネスクの図像学』
第1章の図版・・・38
翻訳者追加の教会の全景写真他の図版・・6
その中でこのページで見るのは、
サン・マリア・デ・リポール修道院教会・ポーチの扉口のあたりを 

 

Ripoll05.jpg
"Ripoll05" by Canaan
- Own work. Licensed under GFDL via Wikimedia Commons.

※公式サイトhttps://www.monestirderipoll.cat/で大サイズイメージがいくつも見られます
https://en.wikipedia.org/wiki/Santa_Maria_de_Ripollより読み込みが速い

カノンの装飾の模倣

(p68)西欧の芸術家とアッシリア芸術の間には、挿絵入り写本という多数の媒体が存在した。四世紀以降、シリア人たちは福音書写本を優雅な柱廊図で装飾し、その下にカノンつまり四福音書共観表を書き記した。  

銃眼模様雷文

(p69)飾りアーチを装飾するという考えそのものも、カロリング朝の美しい写本群から示唆されたものであるに違いない 。
その飾りアーチを「銃眼模様雷文」と呼ばれる単純化されたギリシア式文様で縁取っており、そこにはほとんど常にジグザグ型に続く「折れ線文様」が付帯しているのであるが、この二つの文様は実は、きわめて古い時代からシリア写本のカノンのアーケードを装飾していたものなのだ。

「折れ線文様」は586年の有名なシリアの福音書にすでに現れている。 (『ラブラの福音書』メソポタミアのザグバ修道院で修道士ラブランが彩色装飾、フィレンツィアーナ図書館収蔵) 

(p69)アッシリアの宮殿とロンバルディアの柱廊型装飾をつなぐ線・・4世紀以降のシリア人のカノンつまり四福音書共観書


図30.ピラトの前に引き出されるイエス、サン・ジルの扉口の浮彫 
31. 受難の場面にとりまかれた十字架のキリスト、オーセールの大聖堂所蔵のデッサン

Abbatiale st gilles.JPG
"Abbatiale st gilles" by Vpe - 投稿者自身による作品. Licensed under CC 表示-継承 3.0 via ウィキメディア・コモンズ.

サン・ジル (Saint-Gilles) の扉口(図30)は上の円内
柱が太い 細かい点がオーセル所蔵の図31と似ている・・というが、そこは図がかすれていてよくわからない

Wikipedia
→馬杉宗夫さんの「キリスト表現」解も参照

(p56)イエス・キリストの受難の主題は中世では例外的なもの。
トゥルースToulouse,のラ・ドラ―ド修道院de la Daurade回廊の柱頭彫刻に初めて現れる。すべて南フランスに属する。
(p59)南フランスが十二世紀初頭に、初めて受難を中心に据えたキリスト伝の挿絵入り写本を持っていたことは疑いがない 


(p65) 十世紀のカタルーニャには、聖書の挿絵を描くことに専念していた一群の修道院があった。
この一派は、ピレネー山脈のもう一方の端でベアトゥスの『黙示録』の強烈な色彩の挿絵で飾っていたアストゥリアスの一派とはあざやかに対照をなしていた。カタルーニャの修道士たちは画家ではなく素描家だったのである。
有名なのは『ファルファ聖書』(イタリアのファルファ修道院に所蔵されていたもの。現ヴァチカン図書館収蔵)

図32.四つの生き物に囲まれたキリスト、聖母と使徒たち、シャルリュー(ロアール県)の扉口。(→エミール・マール大絶賛以下もそちらで見ておきます)  
33. 四つの生き物に囲まれたキリスト、聖母と使徒たち、ラヴォデュー(オート・ロアール県)の壁画。
34.四つの生き物に囲まれたキリスト、バウイト(エジプト)の壁画。  
35. 荘厳のキリスト、聖母と使徒たち、アンズィ・ル・デュックのタンパン、パレ・ル・モニアル美術館。

カノンの装飾模倣

図36.ソロモンの夢、リポール(カタルーニャ)の浮彫。  
37. ソロモンの夢、『ファルファ聖書』の写本挿絵。

「あなたに何を与えようか。願え。」


※公式サイトhttps://www.monestirderipoll.cat/にある イメージ: 右下が図37

図38.動物たちに支えられた円柱、マルシアーナ図書館のギリシア語福音書写本、ヴェネツィア

Biblioteca Marciana「マルチアーナ」聖マルコの図書館:サンマルコ広場
https://marciana.venezia.sbn.it/
https://share.system.vc/17/346657

※デジタルライブラリ
https://marciana.venezia.sbn.it/la-biblioteca/biblioteca-digitale

(p71)ロマネスク教会の扉口を飾る小円柱でさえも、挿絵画家によって描かれた小円柱の忠実なる模倣であった
ロンバルディアのモデナの大聖堂の南扉口には、まるで強力な腕が二本の石柱を二本の紐のように撚り合わせたかのような、二本一組の柱が並んでいるる。

この型の柱はロンバルディア人によってトスカーナ地方に持ち込まれ、ルッカのサン・ミケーレ教会の正面を飾っているが、ロンバルディア人は更にそれをドイツにまで持ち込んだ。
この種の二重柱はオリエント写本群の中に存在している。(ヴァチカン図書館所蔵)
彼らがライオンの背に立つ円柱をオリエント写本から借りてきたように、この二重柱もまたそこから借りてきたのである。i


ねじれ柱、アヴァロン(Avallon)のサン・ラザール教会の扉口(p73イメージ)

アヴァロンのサン・ラザール教会の扉口のねじれ柱→2014k/karakusa_umasugi.htmlにて既に見ている部分もあるが、エミール・マールの著書に従って第1章の更に残りの図版を見てきました..

第1章の最後のまとめ
写本挿絵の十二世紀初頭のモニュメンタルな大彫刻に対する影響はきわめて深いものであった。カロリング時代においてもすでに、象牙彫刻は写本挿絵に絶えずその発想元を求めていた。これらの象牙彫刻は、ランス派の「ユトレヒト詩編集」(表記??)の挿絵の模刻であることが判明した→ユトレヒト詩篇(カロリング朝美術の傑作)へ


再掲:第1章の図版・・・38
翻訳者追加の教会の全景写真他の図版は・・6
このページにて、図版30~38を見て います。(シャルリューの図32のみは別ページ) (図版1~18はこちらで見ました。) (図版19~29はこちらで
第2章の図版は目次から続けます

目にとまったページ:
https://www5a.biglobe.ne.jp/~outfocus/..cite-de-architecture-patrimoine :(パリ建築・文化財博物館にて)
https://yosb.blog.so-net.ne.jp/2006-03-09-18:スペイン、カタルーニャ地方にあるリポイのサンタ・マリア修道院

  エミール・マール『ロマネスクの図像学』(下)を読む 、に続く
アーウィン・パノフスキーを読む
古代ギリシア芸術(4様式)

神話学のアウトラインギリシア神話の美術研究に続く・・

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