唐草図鑑

建築-美と空間


『図説西洋建築の歴史-美と空間の系譜』P11
(佐藤達生著河出書房新社 2005年刊)増補新装版 (2014/8/25)

上は、「2500年以上にわたって展開されたヨーロッパ建築の様式の
造形的な類縁関係の図」
この本の第1章は「様式の二つの流れ」ということであるが、ヨーロッパの衛星写真があって、「中央部に見える雪の積もった部分はアルプス山脈。この急峻な山脈が、ヨーロッパを歴史的に二つの世界に分けてきた」というのが・・・・改めて、なるほどね、というさすがの図説。

地中海世界に起源をもつ古典建築の系統
ギリシア、ローマ、ルネサンス、バロック、新古典主義

アルプス以北のヨーロッパに起源をもつ中世建築の系統
とまネスク、ゴシック、ゴシック・リヴァイヴァル

以下、この本の目次読書、ぬきがきを試みたい。 

図説
西洋建築の歴史-美と空間の系譜

佐藤達生著

はじめに

本書における西洋=西欧で、東ローマ帝国の領土だった東欧を含まない。
(東欧のビザンティン建築には触れない)
また大きな影響を与えたはずのエジプト建築にも触れない

造形原理の異なる二つの流れとしてとらえることに力点を置いた
一つは「オーダー」の造形原理に従う様式の系統で、いわば究極の形式。
ローマ人の古代からゲルマン人の中世へ、大きく歴史が転換したときに、様式の創造のやり直しが一度だけおこった。これが第二の流れを形成する。


一方、ルネサンスの人々は中世を否定し、古代ローマに回帰したので、ここに再びオーダーが、美の規範として復活することになる。 しかも古代ローマの威光は極めて強く、オーダーの普遍性は揺るぎがたいものだったので、これに代わる美的規範はついに現れることがなかった。(p5)

佐藤達生(たつき)1952~

柱によって「支える」古典系の建築と、壁によって「囲う」中世系の建築・・その二つの系統が、入れ替わることによってヨーロッパの建築史が構成されている・・・風土と絡めて論じて説得力に富む・・と、http://d.hatena.ne.jp/inoma/にあり


目次

第1章様式の二つの流れ
第2章古典建築の流れ 
第3章中世系建築の流れ


第1章 様式の二つの流れ

二つの世界
様式の二つの系統
ヨーロッパ建築の流れ
建築の二つの機能━「支える」ことと「囲う」こと
機能の二つの表明━「柱」と「壁」
二つの様式━ギリシア建築とゴシック建築
ギリシア的性格とゴシック的性格
二つの風土
構造の方式と造形の論理

第2章 古典建築の流れ

1.ギリシア建築

調和と比例
神殿 三つのオーダー、五つのオーダー
オーダーの構成
オーダーの性格
オーダーと調和
リファインメント
人間性
(⇒ギリシアのオーダー

2.ローマ建築

ローマ建築の課題━多様な建築類型
石造建築に不利な構造
石造建築に有利な構造
組積造とコンクリート
芸術の問題━オーダーの新たな展開
オーダー適用のヴァリエーション
コロッセオ
凱旋門
ローマのオーダー
(⇒ローマのオーダー

ルネサンス


人間の価値
建築の課題
初期ルネサンス
パラッツォ
盛期ルネサンス
後期ルネサンス━オーダーの多様な適用とマニエリスム
大オーダーの発明
オーダーの分解
(⇒建築家

バロック

反宗教改革
バロック建築の特徴
サン・ピエトロの再建
サン・ピエトロの正面
サン・ピエトロの内部とコロネード
サン・カルロ聖堂
各地への伝播

新古典主義

理性と考古学
新古典主義建築の特徴
フランス・バロック
新古典主義の誕生
新古典主義の展開
歴史主義

第3章 中世系建築の流れ

キリスト教建築の始まり

ゲルマン人の登場
キリスト教の世界
教会堂とは何か
過去うこと
内部と外部
オーダーの崩壊
エンタプラチュアからアーチへ

ロマネスク建築

円柱からピアへ
カロリング朝の建築
壁面分節のはじまり
壁面分節の要素
ヴォールトと壁面分節
修道院の役割

ゴシック建築

修道院から大聖堂へ
ゴシック建築の革新
無重量性
ゴシックの空間
構造の仕組み
後期の展開

ゴシック・リヴァイヴァル

ロマン主義とゴシック・リヴァイヴァル
イギリス国会議事堂(ウエストミンスター宮殿)
近代へ

以上、この本の目次読書ですが、これだけでも頭の整理ができる。2014-06-18

補足
長尾 重武, 渡辺 道治 , 石川 清, 末永 航, 羽生 修二 , 星 和彦, 小林 克弘, 関 和明
建築のモチーフ、建築のタイポロジー。各時代の固有なアイテムを多く図版と解説で示した西洋建築史の教科書。 (写真でなく図示)

補足
西洋建築様式史(美術出版社 1995)
熊倉 洋介、羽生 修二、 末永 航 (増補新装2010) 超コンパクトにまとめた、美術愛好者・海外旅行者の手引き、学生の参考書として図版340点 古代から21世木の現在までの西洋建築史を体系的に把握したい入門者には最適である。また、有名な観光スポットとなる建築物はほとんど含まれている

参考文献表あり
以下13章中の一部から

第4章 初期中世建築

(p49) 古代ローマの各都市に立てられていたバシリカという集会 施設を教会堂の代理とした(聖書朗読とミサ典礼)

集中式聖堂の意味と特徴
円形、八角形、六角形、正方形 中心に祭壇を設ける・・信仰を守るために死んだ殉教者を記念するものが多い。(そういった)墓廟と中心に洗水池を設けた洗礼堂としても

ビザンティン建築
縦長プランの上にドーム※マヤ・ソフィア

第5章 ロマネスク建築

(p58)蛮族の侵入による最も悲惨な時期を迎えたのちに開花した11世紀のキリスト教建築

『紀元千年のヨーロッパ』(by ルイ・グロデッキ)
2つのタイプ・・ カロリング朝の手本から派生した「ゲルマン的」オット―朝形態の幾何学的完成(北方の木造天井建築圏)
カタルーニャやアルプス地方の粗野な割石造り・「ラテン的」初期ロマネスク(南方のヴォールト建築圏)

(p61)ロマネスク建築の発展と様式化に重大な影響を与えた至福千年の終末思想と聖地巡礼

西ヨーロッパの自立自覚、地元の材料と工法の地方色

'p63)フランス:北方ゲルマンの建築(高さへの憧れ、多塔構想指向)と南方ラテンのラテンの建築文化(石造ヴォールト天井で全体を覆う堅固形態と建築技術)が合流

(p64)イタリア、スペイン:初期キリスト教の簡素なバジリカ式建築形式を頑なに守っている特徴・・立体的建築構成に無関心

(p67)ドイツ三大聖堂:シュバイヤー大聖堂、マインツ大聖堂、ヴォルムス大聖堂・・二重内陣式が愛された、三葉形内陣式

 

第6章 ゴシック建築

フランス・・サン・ドウニ修道院付属聖堂、シャルトル・ランス・アミアンのカテドラル

イタリア・・フランス直系のゴシック建築はミラノ大聖堂ぐらい、シトー修道会の修道院は全面的に受け入れられた

ドイツ・・多くはロマネスク様式の影響を残したゴシック、ケルン大聖堂はアミアン大性づに倣っている、都市のランドマーク

イギリス・・ランセット窓の採用からサンセット式と呼ばれるカンタベリィ大聖堂、装飾式ゴシックと呼ばれるリンカーン大聖堂、垂直式ゴシックと呼ばれる道内側面の垂直式トレーサリーと華麗なファン・ヴォールト グロスター大聖堂、ハンマービーム ウエストミンスター・ホール

文献案内からのごく一部

芸術作品としての都市―ロンドン・パリ・ウィーン

磯崎新+篠山紀信 建築行脚 (5) 中世の光と石 ル・トロネ修道院

大聖堂のコスモロジー―中世の聖なる空間を読む (講談社現代新書)


補足
建築と都市の美学 イタリア〈3〉優美―ロマネスク・ゴシック (コンフォルトギャラリィ) – 2000/12
大槻 武志 (著), 陣内 秀信 (監修), 喜多 章
建築と都市の美学(ロマネスク・ゴシック)


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