尾形希和子著(沖縄芸術大学)
2013年12月刊 (講談社選書メチエ)
/目次読書2014-08-17/
第一章 怪物的図像とイコノロジー的アプローチ
第二章 神の創造の多様性としての怪物・聖なる怪物
第三章 怪物的民族と地図
第四章 「自然の力」の具現化としての怪物
第五章 世俗世界を表す蔓草
第六章 悪徳の寓意としての怪物から辟邪としての怪物へ
第七章 古代のモティーフの継承と変容、諸教混淆
第八章 怪物のメーキング
結び 怪物的中世
第一章 の研究の方法、図像へのアプローチの仕方に続いて「怪物」、を丁寧読み 2014-09-16~
7「怪物のメーキングにおいて古典美術の形態や概念がいかに継承され、変容させられてきたのか、ドラゴンとセイレーンを例に挙げて示す」
怪物のメーキング
西洋美術におけるあいまいなイメージ
東洋との違い━征服されるべき自然として
大蛇ドラコ
(p241)中世の『百科事典』の中の蛇
ドラゴンのとさかの由来
「空気をかき乱し、嵐を呼ぶもの」
モデルは「槍蛇か」?
地を這う最大の動物
ドラゴンとレヴィアタン
火炎との結びつき
とぐろを巻く尾
魔除け・宝物の見張り番という役割
同種治療(ホメオパシー)として
杖や聖杯にほどこされたドラゴン
コクッロの蛇捕りの祭り
蛇の道は蛇━期待された解毒力
蝮由来の名前
強く作用する深層心理のシンボルの力
蝮、バジリスクなどとの混同
セイレーン=人魚の場合
魚の尾を持つ存在
サン・ミシェル・デギーユ聖堂のセイレーン
長い髪、櫛、鏡そして食らいつく蛇
バビロンの大淫婦との同一視
古代のポジティヴな記憶━「天井の音楽」や「知識」
無敵の繁栄の象徴として
スターバックのセイレーンもかぶる王冠
居酒屋の看板にも
植物を両手に持つ人魚
豊穣の地母神?━民間信仰の中で
ケンタウロスとの関係
二股を広げたポーズ━コルシニャーノ教区聖堂
エトルリアの女怪物スキュラ
自らの子宮の中へ
性的な暗示ゆえに
南米大陸に移住したセイレーン
先住民のまなざし━受容する側のシンクレティズム
『大航海』に描かれたホラ貝を持つセイレーン
(p292)※1628年エオドール・デ・ブライ弦楽器との結びつき━音楽の精霊
天使の代替モチーフ
さまざまな境界を軽々とまたぐセイレーン
西洋中世研究における怪物
見直される怪物的中世
イコノロジーと領域横断的アプローチ
カルチュラル・スタディーズの対象として
怪物研究の東西
日本の妖怪・化け物研究 小松和彦
非理性的、非合理的な存在として学術研究の対象になりにくかった
怪物たちは「精神の表象の重要な構成物」の一つであり、今や「文化」を理解するための「解釈の枠組み」であり、重要な「鍵」なのだ。
「聖なるもの」と「本質的なもの」
(p307) ルネサンスにおける「グロテスク文」は、「周辺」に位置して「中心」を際立たせるものであった。
ゴシックの様式化、美化されたピープルド・スクロールの中では、人間主義的な秩序の中で馴致され、より装飾的・美的な存在である。
一方ロマネスクのそれ(植物や動物や怪物たち)は、ときには罪にみちた「現生」を、時には「マクロコスモス」を暗示しながら、人間とそれを取り巻く自然との関わりの中で教会を揺るがすという本質的な役割を担わされている。
写本の中でも特に「イニシャル」はある時期には怪物の牙城となった。
『フィシオログス』や『動物誌』の様なキリスト教的動物寓意集の中でも、怪物たちは実在の動物と同様にその存在を疑われることはない。
中世『百科事典』の中でも怪物たちは自然界の構成物として登場する、宇宙の隠されたメッセージを伝えるメタファーやシンボルである。
人間中心主義を脅かす怪物
(p308)ピープルドスクロール(…中略…)そこでは人間たちも自身を取り巻く自然を畏怖し、(中略)自然界や宇宙に満ち溢れる驚異を讃えていた。
この本の 感想のあるサイト
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ここまで