仏教美術のイコノロジー―インドから日本まで (宮治昭著 吉川弘文館 1999) 本の説明。(「BOOK」データベースより) |
この本の一部、「蓮のイコノロジー」と
「 聖樹信仰と仏教美術」を 2009年に丁寧に読んだのですが、本の目次を追加し、「仏教美術」として、全体を見ます(20160428)
(写真はwikimedia利用)
巻末の<初出一覧>とコメントに、「ともかくもインドから日本までの仏教美術を横断する」とあり、「ともかくも (4地域の)仏教美術の特徴を浮かべあがらせる」試みと。
p6図3 満瓶(プールナ・ガタ)バールフト
仏教美術の淵源
ブッダ釈迦のさとりの「智慧」と、他者への救いのまなざし「慈悲」 がシルクロードの活発な西交流の波に乗って伝播し、アジア全域で仏教美術が花開いた
中心的テーマは、仏陀の世界=「彼岸」「浄土」「楽園」
釈迦の死は輪廻転生を繰り返す一般人の死とは違い、釈迦の求めた「涅槃」(永遠の寂滅の世界)の完成(達成)で、ストゥーパはその象徴
ストゥーパに見られる宇宙観
丸い形体(覆鉢ふくはつ) ・・塚、同時に子宮・卵(中に「種子」)→宇宙論的な始原
モティーフと表現
水から生え出る蓮:仏教の華、水の華、根茎が二股になり「節」から枝分かれし、植物の生命の繁殖の過程をよくあらわしている=「蓮華蔓草」→「如意の蔓(カルパ・ラター)」
聖樹信仰
大地から生ずる樹木:葉を落として死んでも「生き返る」再生の力、生命力
釈迦の仏殿の中の四つの重大な出来事(誕生・成道・初説法・涅槃)はすべて樹下で起こる→「如意の樹(カルパ・ヴィリクシャ)」
生命の豊かさに見る彼岸
チャイチィヤ=もともと聖樹を意味した→ストゥーパを指すようになる
View of the Bamiyan Valley with the destroyed Buddha statue.
2005年7月 wikipedia(バーミヤン渓谷の文化的景観と古代遺跡群)@アフガニスタン
弥勒信仰
釈迦の説法から漏れた人々を救ってくれるという救世主的性格
大仏と天上世界
バーミヤーン 6~7世紀:高さ33メートルと55メートルの巨大仏が遺跡の中心
仏教美術の変化
弥勒とそれを取り巻く千仏構図
中央アジアの人々の天空に対する観念と結びついた弥勒信仰の造形で、インドの仏教美術は大きく転換した(p14)
トヨク20窟 トゥルファン(中華人民共和国新疆ウイグル自治区)
北魏の仏教美術
竜門石窟古陽洞(495~20年間) 仏龕に交脚の弥勒菩薩
死者の冥福を祈る
インドでは信者が現世の功徳を積むために寄進→中国ではほどんどが死者に対する回向
中国古来の神仙思想、昇仙思想、祖先崇拝が仏教を受け入れる土壌として働いた唐であろう。(p16)
天上への再生
蓮華から顔や上半身を表した化生の(けしょう=自らの業力によって忽然として生まれる)天人の姿も北魏の天空表現の中に現れる
天の花、光の花である蓮がパルメット植物文と結びつくだけでなく、中国古来の伝統的な雲気文と融合し、流動感と生命観に富んだ不思議な植物雲気文を生み出し、飛天の周りに飛び交うようにあらわされ、その中に蓮華化生の天人も現れる。(p17)
阿弥陀信仰への転換
6世紀中ごろ~7世紀初めごろ 大きな転換期 ;天上の彼岸よりも西方極楽浄土のイメージが膨らむ
浄土教美術の初期的様相:
観想の実践と浄土信仰が結び付く:禅観僧 髑髏・白骨など(不浄 小乗仏教以来のもの) 宝樹・池など(浄土)
阿弥陀浄土図の流行
基本構図:前方に蓮池、中央に蓮華座に座す阿弥陀仏と観音と勢至の両脇侍菩薩、多くの聖衆、背後に楼閣建築、虚空に天人、天の楽器
阿弥陀仏は、天井の弥勒菩薩とは異なり、太陽の没するところ、死者の赴くところの教主
蓮池に蓮華化生の童子(死後は阿弥陀浄土に生まれることを願った)
彼岸の造形
日本の仏教美術は、大陸の圧倒的な影響の下に、自らの彼岸の造形を育くんできた。その波及と変貌の様相をたどることも面白いが、最も日本的な平安時代後期に焦点を当てると、末法の世の自覚と極楽往生が切実な問題であった
法成寺(ほうじょうじ)阿弥陀堂 九体の金色の丈六阿弥陀仏
ミリ長の子より道が平等院阿弥陀堂建立(1053)
死の意識と彼岸の幻視
死の瞬間の問題:往生者に対し阿弥陀の来迎を喚起する「九品往生図」
仏教美術の流れということは、以上であるが、仏教美術の初めはこちらの「すぐわかる東洋の美術」(竹内順一) 第2章で、みました。
この項は→ロータス文様ということから、「蓮のイコノロジー」を読みました
この項は→聖樹文様ということから、「木のイコノロジー」を読みました
この項に関連して、「仏像の始まりはいつどこで誰が」で ガンダーラ仏とマトゥーラ仏の比較をみました
20160429
* ASUKA/飛天の誕生http://www.asukanet.gr.jp/ASUKA4/hiten/02_2.htmlインドで形づくられた仏教美術の原形は、インド独自の文化と地中海を取巻く諸文明とが永い年月をかけて溶けあった基盤の上に出来上っている。
「エジプトの睡蓮のパターンとそれに影響されたと見られる周辺各地のハスの花の図を並べてみた」
*「ハスのコスモロジー」 武澤 秀一http://www.circam.jp/essay/detail/id=1968INDEX | アカンサス | ツタ | ロータス | ブドウ | ボタン | ナツメヤシ |