新刊の『柑橘類と文明』なる本と、荒俣宏『花の王国』の「有用植物」から見てみます。
『柑橘類と文明』(P62) ヘレナ・アトレーHelena Attlee著
三木直子訳2015年5月築地書館刊
原題:Then Land Where Lemons Grow
The Story of Italy and Its Citrus Fruit
マンダリンとブンタンの交配種:オレンジ
・・・スィート・オレンジもダイダイ=別名ビターオレンジも両方とも
ブンタンとオレンジの交配種:グレープフルーツ
シトロンとダイダイの交配種:レモン
(『柑橘類と文明』P62 )
(『柑橘類と文明』p62 )
ブッシュカン(仏手柑)はシトロンの変種 (C. medica var. sarcodactylus)
(『柑橘類と文明』p65 )
1860年、、シチリアの柑橘類栽培は、ヨーロッパで行われたほかのどんな農業生産よりも大きな収益を生んだ。
マフィアmafiaの多くは貴族階級の人間であり、全員がコンカドーロで最も力のある地主となった近代的な企業家だった。(p110)
多額の投資が必要で回収に時間がかかるということが地主たちを多いに神経質にさせた。マフィアによる用心棒代の取り立て。不安の種をまくと同時に危険からの保護を提供することで、マフィアは19世紀半ばから20世紀の初頭まで、柑橘類栽培のあらゆる側面を支配した。悪徳に満ちた時代。 (『柑橘類と文明』p112)
マフィアの起源は、中世シチリアのガベロットと呼ばれる農地管理人である。彼らは農地を守るため武装し、また農民を搾取しつつ大地主ら政治的支配者と密接な関係を結んでいった
Wikipedia1937年アルベルト・セント・ジェルジが、レモン果汁に含まれるビタミンCが抗壊血病成分であることを突き止め、ノーベル賞を受賞
"Aurantium corniculatum" by engraved by Cornelis Bloemaert, ca. 1630 - https://www.georgeglazer.com/prints/nathist/botanical/ferraricit/semalphitanvs.JPG. Licensed under パブリック・ドメイン via ウィキメディア・コモンズ.
"Striatus amalphitanus" by engraved by Cornelis Bloemaert, ca. 1630 - https://www.georgeglazer.com/prints/nathist/botanical/ferraricit/semalphitanvs.JPG. Licensed under パブリック・ドメイン via ウィキメディア・コモンズ.
君知るや南の国
レモンの木は花咲き くらき林の中に
こがね色したる柑子は枝もたわわに実り
青き晴れたる空より しづやかに風吹き
ミルテの木はしづかに ラウレルの木は高く雲にそびえて立てる国や
彼方へ君とともに ゆかまし
Then Land Where Lemons Grow・・君知るや南の国
byゲーテ (森鴎外訳)
印欧語で"Apple"は果実全般を指す語
さまざまな言語における黄金の林檎
多くの言語で、「黄金の林檎」とはオレンジのことである。(Wikipedia黄金の林檎2015-09-12参照)
"GardenHesperides BurneJones" by エドワード・バーン=ジョーンズ
- preraphaelitepaintings.blogspot.com. Licensed under パブリック・ドメイン via ウィキメディア・コモンズ.
以下「世界シンボル事典」より
リンゴ以下「イメージ・シンボル事典」より
オレンジMattioliは、植物の学名で命名者を示す場合にピエトロ・アンドレア・マッティオリを示すのに使われる。
図版出典は
「オレンジ図誌」リッソ, A&ポワトー,A.
"Histoire Naturelle des Oranges",Risso ,A. Poiteau A,Paris,1818-22
(下の図はgooglebook)
オレンジは遠くサンスクリットの「ナランジャ」に起源するが、直接には南仏蘭西の地名に由来
原産地:インド北東部に起源。中国、ポルトガル、アゾレス諸島、アメリカと伝播する過程のどこかで確定。
オレンジの中国名:甜橙
西洋に伝わったのは15世紀中ごろ。ポルトガル人の手による。
西洋導入後はスペインが主要なオレンジ生産国となった。
フランスやイギリスなどアルプス以北の国では、南国を感じさせる果樹ちして17世紀ころ流入。オランジェリーと呼ばれるセンニョう温室で盛んに育てられた。
アダムのリンゴはベルガモットとレモンの交配種
ライム:「騎士団員の西洋ナシ」の仏蘭西名を持つ
キンカン
学名の属名フォーチュネッラはイギリスの著名なプラントハンターR・フォーチュンの名にちなむ
柑橘類の中ではもっとも小さい
原産地:中国
中国名:金柑
ダイダイ
和名は代代
原産地:インドあるいは東南アジア
中国名:酸橙
スペインのセヴィリャの名産品で、現在も、マーマレードの原料として生産されている
日本には古代に中国から移入された。記紀に登場する「トキジクノカグノコノミ」と推定される。正月の鏡餅の上に飾られる。落下しにくく金色であることから縁起物とされたもの。
仏典では、様々な植物が言及されているが、ここでも柑橘の記載はほとんどない。唯一、ナガエミカン(wood apple)が知られているだけである)。時代が更に下って仏教が東漸してゆくと、それに伴ってシトロンの一種である仏手柑が寺院に植えられるようになるようだが仏教が形骸化・形式化していく中で、仏手柑の象徴性が珍重されたものと思われる。
【参考文献】https://www.electrummagazine.com/2012/10/exotic-history-of-citrus/
ポンペイの家の壁画
ディオスコリディスなど
Engraving of an Italian Orangerie by Gio. B. Ferrari.
From his 18th c. Hesperides (Photo public domain)
"Domenico ghirlandaio, cenacolo di ognissanti 01" by ドメニコ・ギルランダイオ - Web Gallery of Art: Image Info about artwork. Licensed under パブリック・ドメイン via ウィキメディア・コモンズ.
オンニッサンティ教会の「最後の晩餐」 1480年 4×8メートル
パーンの神話
古代ギリシャとローマでじゃ「林檎」は果実全般を指す言葉で、紀元前450年にオリンピアに建てられたゼウス神殿のフリーズに見られるように、黄金の林檎はもともとはカリンとして描かれていた。
だが一世紀になると、モーリタニア王国のユバ二世は、カリンではなくシトロンのことを「ヘスぺリアの林檎」と呼んでいる。
二世紀になり、皇帝アントニウス・ピウスの統治時代にヘラクレスの功業が一連の銅のドラクマ硬貨に描かれたろき、
ヘラクレスが木から摘んでいるのはシトロンの形をした果実である[16世紀、神話がイタリア庭園の図像に豊富に使われるようになった時、ヘスペリデスの園の絵にはまだ、シトロン、ときにはオレンジによって描かれていた。
『柑橘類と文明」』はイタリアと柑橘類の物語・・木々が強烈な幸福感を発散させている、南の国の果物・・・
カバーはウィリアム・モリスの「果樹園」とあり・・
何かオレンジの実を
花びらみたいに葉(?)がとりまいているというデザイン は、よく見ると不思議
桃
苺
柿
栗
林檎
梨
梅
蒲萄
蜜柑(ミカン)
柚(ユズ)
杏子
李
山桃
木苺
桜桃
金柑(キンカン)
酢橘(スダチ)
甘蕉
八朔(ハッサク)
郁子
椰子
無花果
胡桃
柘榴
枇杷
荔枝
檸檬(レモン)
竜眼
棗
茱萸
朱欒(ザボン)
橙(ダイダイ)
通草
榛
桶柑(タンカン)
橄欗
九年母(クネンボ)
柑子(コウジ)
山桜桃
仏手柑(ブシュカン)
椪柑(ポンカン)
巴旦杏
榲桲
蜜柑
ミカン科の柑橘類の総称。ミカンの種類は多い。
漢字では 柑・橘・橙・柚等がある。
しかしそれらが現代のどんな種類にあたるかは定説がない。
和名のミカンはもとはミツカンといい、蜜のような味がするところから名がついたという。
カンはもちろん漢字の柑である。柑も甘(カン あまい)が語源である。
漢名の蜜柑は用例がきわめてとぼしいが、ポンカンを指したらしい(加納喜光2008)
柚子
ユズのズは酢。ユは柚の音または弥(いや)の意だとされる。
現在の中国では、柚はユズではなく、ザボン(文旦)のことである。
本草網目の李時珍(16世紀)は、由(ゆ)はつぼの象形文字であり、柚は団欒(まるい)の形に象ると述べている。この柚はザボンの形にふさわしい。(加納喜光2008)