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毛皮の衣類


ベックマンによる毛皮の衣服の起源

me豹の毛皮を着る, 最古のモードカウナケス古代オエリエントの衣服・・についで、ベックマンによる毛皮の衣服の起源の論を見てみた

meベックマンの『西洋事物起源』の最終巻(四)(岩波文庫 特許庁内技術史研究会訳2000)と、小学館の抄訳(今井幹晴訳荒俣宏解説 1999)

(1)寒がりのローマ皇帝が使用した冬着にまつわる記録に、毛皮の記述は全くない 

(p12) スエトニウス(※)はさまざまな衣類の名を挙げたが、毛皮については何も書いていない。もし毛皮が日常のものであれば、寒さに弱い皇帝はきっと毛皮を着ていたであろう。互いに重ね合わせて切る四枚のトゥニカ、羊毛のシャツや胴着のトーガ、そして記述されているあらゆるものよりも毛皮の方がずっと便利で目的にかなったものだったことは間違いない。

スエトニウス ガイウス・スエトニウス・トランクィッルス
(Gaius Suetonius Tranquillus, 70頃 - 140頃)

プリニウスが、動物の毛皮の用途に関する多くの迷信について述べ、あざ笑っている

me 『プリニウスの博物誌』であるが、上の記述を参照しようとしたがよくわかない。アフリカのプレミュアエ族の話は5-8、傘脚種族は7-23にある。セレス(中国)人、インド人、エチオピア人の産物として森から得られる毛織物(木綿)の話は6にある。
魚皮でつくった衣類を着ているペルシア湾の甕亀食い種族(6-28) もあるが、別にあざ笑っているわけでもない。

第7巻は「人間」の項で  2に「自然はすべての生物の中で人間だけを借り物の資材で覆う」
そして7-21からが有名な、「東方の怪異と奇妙な風習」の話だが、
7-23に 「多くの山々には犬の頭を持つ人間の種族がいて、それは野獣の皮衣を着、その言語は咆哮であり、獣や鳥の狩猟の獲物を食べて生きている」・・とあるが、毛皮の用途の話というわけでもない

発明・発見と創始 (7-195)
「織物はエジプト人によって、毛織物の染色はサルディスのリュディア人によって、毛織物製造における棒紡錘の使用はアラクネ(織物の名手)の息子クロステルによって、リンネルと網はアラクネによって、仕上げ技術はメガラのニキアスによって、製靴技術はボエオティアのテュキウスによって発明された」

me羊毛の話[衣服の話]は第8巻にある。 

・ルシタニアのサラキアが市松文様を宣伝している羊毛
自然にフェルトになった羊毛は衣服になる
・娘たちが結婚の際、糸巻き棒と錘(にまかれた羊毛)を持っていくという習慣が起こった。
なめらかな布とプリクシアの羊毛でつくったトーガはアウグストゥスの晩年に始まった
・縁取トーガはエトルリア人に起源をもつ。
・縞のあるトーガは王たちが着たもの

花嫁の白いトゥニカ

Aldobrandini Wedding(en.wikipedia)
Aldobrandini wedding

「タナクイルが初めて、新信者や新婚の花嫁が無地の白いトーガと一緒に着るような、きちんとしたトゥニカを織った」(プリニウス 8-194)

Meister der Aldobrandinischen Hochzeit 001

中央が花嫁 ヴァティカーノ博物館蔵「(プリニウスの博物誌 図69)

トーガ

「(プリニウスの博物誌」図70のトーガを着た第4代皇帝クラウディウスの像(パルマ国立古代美術館蔵)はウィキメディアに見当たらない
4代目クラウディウス (Tiberius Claudius Nero Caesar Drusus, 紀元前10 - 54)は3代目カリグラ、5代目ネロ の間で、Wikipediaに、プリニウスは、彼を最も重要な学者(歴史家)としたとある。確かに引用がしばしば見受けられる。
 

Caesar augustus

Portrait of Augustus created ca. 20–30 BC; the head does not belong to the statue, dated middle 2nd century AD.
(ヘッドはたしかに違う)

(プリニウス8-195)「襞のある衣服は人気のあるものの中でも最高であった。その結果ぼつぼつのある衣服は廃れてしまった
なめらかな布とプリクシアの羊毛でつくったトーガはアウグストゥスの晩年に始まった

meざっと見て、今回、裾のある長いローブを着たリーベル・パルテル(生産と豊饒の神)についての言及が多く目に入ったが、毛皮を着ることをあざ笑うという記事は見つからなかった・・??
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また、毛皮は聖書の中に衣服としてそれほど頻繁には表れていないことは確かである

(2)ローマ帝国を攻撃して、一部を征服した北方民族のすべてが、教養もなく野蛮で、芸術や科学を理解せず、略奪や殺戮を繰り返していたとみるべきでない 

ローマ人がこの招かざる客から毛皮の服を知ったことは確かである。皮衣renones 美しく高価なもの 自分たち同士で自己顕示する手段

(p15)ドイツ人や北法民族は、ローマ人との交流の結果毛皮の使用をしだいにやめて羊毛の衣服になれていき、他方、ローマ人は、その征服者が公式の場で着る服を採用した

me 20180429
動物の毛皮を着る事の意味を見ているうちにこちらに迷い込んだのだが・・「チュニック」の起源の方も問題であった・・

meここで美術史における用語「オリエンタリズム」を新たに追加します

オリエンタリズム

オリエンタリズム(Orientalism)
    by高橋裕子(『西洋美術のことば』小学館2008)
                                       
美術史では、西欧人が当方(オリエント)のイスラム世界の風物や文化に寄せたあこがれや模倣の試みを指す。

ルネサンスから存在するが、アフリカとアジアへの史王の勢力拡大に伴って19世紀に頂点に達し、異国的主題、非西欧的な造形感覚や色彩感覚持つ作品を多数生んだ
オリエンタリズムの美術家たち(「オリエンタリスト」の中には現地を訪れて制作する者もいたが、輸入品や伝聞をもとに想像の東方世界を描く者と同様、作品には西欧から見た「他者」に対する固定観念が認められる。

meエドワード・サイード(1935-2003)は、西洋にとってオリエントのイメージは、異質な文明という先入観に基づいた西洋人の幻想、偏見の対象となっていると批判したが、上の美術用語解説にはオリエント(イスラム世界と限定)への憧れと模倣としか書いてないので、驚いた。 違和感もある・・
毛皮を着ることについて見て、またプリニウスを読んでも、「オリエンタリズム」とは、まずもって、「東方の怪異と奇妙な風習への嫌悪」とか「 異質なありきたりでない衝撃を与える文物の美」への憧れ、アンビバレントな興味であると考える・・

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矢印オリエントの文様

矢印オリエントとは
麦と山羊
ウルクの大杯(ワルカの壺)
ウルのリラ(ウルの「スタンダード」)
シュメールのカウナケス
古代オリエントの衣服史
ベックマンによる毛皮の衣服の起源
シュメールの神(エンリル、イエンナ)
バビロンのヘビ(主神マルドゥクと聖獣ムシュフシュ)
シムルグ

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