花の図像学:花唐草とは?
ここで、「花唐草」とは、一般の「牡丹唐草」・「菊唐草」などを指すべきところだが、筆者の感覚では、それらはすでに、文様というより模様であって、唐草に種々の花を組み合わせただけのものでしかないように見える。
唐草文様としては、ロータス(蓮、スイレン)は唐草文様以前からの根源的なものであったが、ここで、花だけを見ると、ユリやバラはもう一つ見ておくべきだと考え、花の図像学として、唐草図鑑に追加す
ることにした。
また、アラベスクとしてみると、チューリップも検討すべき花である。
形・イメージ (文様/文化/象徴)
フルール・ド・リスの起源
文様の花は現実の植物学的分類必ずしも従っていない。
リリイ(百合)とアイリス(アヤメ、ショウブ)な同じ形の文様になる
百合の文様はフルール・ド・リスとフランス語で呼ばれることが多いのは、
フランスでよく使われたからであろうか。
別文献『英米文学植物民族誌』を見ると、フルール・ド・リスはユリでなく、yellow iris(イチハツ)の別称という。ただし、「古くは美しい花なら何でも漠然とlilyと呼んだらしい」とある。
中央の花びらはまっすぐ立ち上がり、
左右の花びらは対照的に外側に開く。
百合から文様へではなく、文様が百合に見立てられた。
形は噴水のようでもあり、
花弁の間から芽が誕生しているようでもある。
百合の文様がヨーロッパに入ってきたのは中世
伝説によれば、フランク王クローヴィスが496年に
300人の家臣を伴って改宗したとき、
聖母マリアが百合を与えたという。
(百合が聖母である処女マリアの象徴とされるようになった
中世に作られた伝説。)
純粋性、誕生⇒百合の象徴的意味にもなっていく。
フランス王たちはかなリ古くから百合の文様を使っているが
紋章としての意味を持つようになったのは、
ルイ7世(在位1137~1180)の時
フルール・ド・リスが本格的にフランス王家の紋章として
盾に描かれるのはルイ8世の1223~6年ごろ
別文献を見ると、ルイ6世が、 最初にフルール・ド・リスを王家のシンボルとして使ったフランス王という。(このあたり詳しくは次ページへ)
紋章
フルール・ド・リスは、紋章の3大シンボルの一つ。
仏蘭西・ブルボン王家の象徴であり、ユリの花、イチハツの花などと訳されるが、それが何に由来するのか正確にはわかっていない。
ユリ説以外にも、
槍の先をデフォルメしたものとする説、
笏杖(王権を象徴する)説、
建物の尖塔説、
神聖な文字を組み合わせたシンボル説、
蛙や蜜蜂の説などがある。
スフインクスの髪飾り!?
「英米文学植物民族誌」によれば、fleur de lisは、「エジプトでもスフインクスの髪飾りに完全な形で彫刻されているという」とある。
これはどうなのか??
みたことがない。
ちなみにLilyの項に「古くは美しい花なら何でも漠然とlilyと呼んだらしい」とある。これは確かに。
しかしながら、パルメット樹文、パルメット唐草の中の「翼パルメット文」のようなものまで、この
フルール・ド・リスの中に含めるのは、どうだろうか?
⇒詳しくはユリ文様 その2で