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美術

中世彫刻の様相(アンリ・フォシヨン)

me アンリ・フォシヨンを読みます。まずは、『ロマネスク彫刻 形体の歴史を求めて』(辻 佐保子訳1975 原書1931)を。ついで、『西欧の芸術 ロマネスク』(神沢栄三ほか訳1970-76 原書1936)

→フランスの美術史家アンリ・フォシヨンの頁
再掲:(仏: Henri Focillon、1881- 1943)ブルゴーニュ地方の首都ディジョンに生まれる。62歳没

この著書は「序言」によれば。1926年から29年のソルボンヌ大学での講義の要約


扉絵(ヴィラ―ル・ド・オンヌクール「アルバム」第21葉裏)
運命の輪
Villard de Honnecourt(13世紀のフランスの建築家、芸術家)

ロマネスク彫刻目次

序言

一章 中世彫刻の三つの様相(p21-37)

二章 壁面彫刻の諸原則

三章 混乱

四章 ヘレニズム美術の残映 アーチ列に並ぶ人物群

五章 準備段階の諸経験

六章 ロマネスク彫刻における配置と機能)

七章 配置と機能(承前) 十一世紀におけるさまざまな探究

八章 変身(メタモルフォーズ)

九章 運動の研究 アルベルティの窓 運動を産み出すものとしての均衡の保証

十章 中世における幾何学術

十一章 浮彫と肉づけ

十二章 ロマネスク美術の終焉

訳者あとがき

索引

ロマネスク彫刻関係地図

帯の惹句

me「伽藍の強固な厳格さに繁茂しまといつく彫刻群の不思議な優美さ―中世の無名の職人が教会を彩った芸術の秘密を探り、その普遍的な意味を掲示的深みから論証する詩人美術史家の傑作」

me課題は「オム・アルカード」...
第四章の「アーチ列に並ぶ人物群」homme-arcadeであるが・・
越宏一さんの「ヨーロッパ中世美術講義」

美術史家アンリ・フォション(Henri Focillon)が『ロマネスク彫刻-形体の歴史を求めて』(辻佐保子訳、中央公論社1975)で名付けた
・・とあったので、このあたりをよく見たいと思う。

この第四章に挙げられた図は5つある

第一章から第三章については、ざっと読んでしまったが、この後で、もう一度戻ることにしたい
本の章別ページ数を見ると、組み紐文も出てくる第5章と、たくさんの柱頭の図が出てくる第8章、そして最終章が読みでがある。

「しばしば、村の小さな広場で、時の経るに任せた教会の玄関口や正面(ファサード)の陰にたたずむ時、自由自在な組合せを示す装飾モティーフ、人体が同時に動物でも植物でもあるような、組紐文でも、雷文でもあるような浮彫は、私にとって理性のみでは手におえないもののように思われた。
これらの浮彫のなかに、私はまず最初、不思議な妖精物語を見るように感じた。
奇想的な小鳥たちが戯れる、キリスト教田園詩に端を発する、植物文様は、いわば一種の変身譚を物語っているのではないかと考えた・・」

第一章 中世彫刻の三つの様相

1 彫刻と図像
―叙事詩 百科全書 劇作法としての図像学

2 彫刻と宗教思想
―精神の系譜 幻視者と弁証家 位階の秩序として      の、現実それ自体としての自然

3 彫刻と形体学(モルフォロジー)
―進化論批判 様式と様式論 経験、技法、影響の      諸概念 建築における彫刻

1 彫刻と図像
―叙事詩 百科全書 劇作法としての図像学

中世の彫刻は当時の世界を映す映像、一つの歴史圏、一つの社会、一定の方式に従って生活し、感じ思索することの全体を反映している

完全な形でこれを考慮しうる学問とは、図像学と哲学と形体分析とを同時に研究しうる体制を整えたものでなけらばならない

図像学研究の一新 エミール・マール(ソルボンヌ大学のフォションの前任者)

エミール・マール以前のディドロン(19世紀のビザンティン学者) 美術作品が教化的な価値を持っていた(教会壁面が大衆教育の場であった)時代、作品の「主題」を知る事は極めて重要であった
大聖堂の壁面 信仰と伝統と思想の膨大な貯蔵庫 彫刻は一つの言語である

図像学の素材は、明瞭に性格を異にするいくつかの時期に話分割される

中世初期の混沌

6世紀における「古代ギリシアの造形精神に対する東方の装飾本能の決定的勝利」

クリュニー改革派の活躍により、フランス南部に彫刻が復活し「ギリシア的な作品」の創造再開

12世紀 叙事詩的 本質的な特質と開花

Moissac (82) Porche 05
図1 モワサック サン・ピエール修道院教会 玄関口西側壁
「貧者ラザロと悪しき富者」「吝嗇」「淫乱」(p23)
2014k/moissac.html 

「貧しいことはその当時尊いこととみなされていた」(エミール・マール)
ラテン語キリスト教文学の古い詩であるプルディンティウスの『プシコマキア』が石の浮彫の上に復活
*「美徳・悪徳」の戦いを書いたプルデンティウスの叙事詩

巡礼と遺物崇拝の世紀
黙示録のカンタータがその壮大な調べを初めて鳴り響かせたのはモワサックにおいてであり、フランス南部の全域に伝播することになる一定の図像を表す様式が決定されたのもモワサックにおいてであった

しかし北部の諸地域も、旧約・新約両聖書の神秘的な照応というテーマを復活させることにより、十二世紀の宗教思想に貢献した
シュジェールはサン・ドニ修道院を一大工房と為し、そこに集められたマース川流域の貴金属細工師たちは、新しい表現の形式を洗練していった
※→gothic-architecture.html

シュジェールは、キリストの到来を予告した預言者や王たちの彫像をバシリカの扉口の両側面に建立した
彼は古きユダヤの聖書から積み重なる過去の埃を取り払い、これ(旧約聖書)を福音書へと信者を導く大きな玄関口となしたのである(p24)
(現在は人像からなるこの扉口は、わずかにモンフォーコンのデッサンによって知られるにすぎない→ ※→人像円柱saint-denis.html

13世紀は、もはや叙事詩や巡礼や「幻想」の時代ではなく、秩序の恩恵に浴することとなる
同じ思想を背景として一時に大聖堂と百科事典とを生み出した(p24)

Facade ouest bas
図2 オルネー サン・ピエール教会 迫持飾り
「賢き乙女と愚かな乙女」「美徳と悪徳の戦い」
Eglise Saint Pierre d'Aulnay
*→mosac.html

一時代が達成しうる知識の集大成ヴァンサン・ド・ボーヴェの『世界の鏡(スぺクルム・ウニウエルサーレ)』 (自然の鏡、学芸の鏡、道徳の鏡、歴史の鏡の四部)
「自然の鏡」=テオフタストゥス、大プリニウス他・・ 『フィジオログス』の不詳の著者や教父たちはこのように被造物を解釈してきた
13世紀になると被造物は「動物づくし(ペステイエーレ)」が要求する枠を超えて溢れ出す・・あくことなき好奇心の対象
「学芸の鏡」=手と精神の労働に捧げられる・・『労働と日々』の暦、七自由科学芸の像が支配する
「道徳の鏡」=美徳を学芸よりも上に置く 古い型の闘争(美徳と悪徳の)は終わりを告げた
「歴史の鏡」=神と聖者と、新約聖書の予型(前兆)としての旧約聖書を物語る・・
「ユダヤ教会(シナゴーグ)」はいまだ盲目の状態にある「キリスト教教会」 翻訳、あるいはむしろ神託と現実の事件との相応の様に並置される 
エリュトリアの巫女シビラが、ただ一人生き残っている理由はダヴィデとともに神の怒りを予告した一人であったから・・「怒りの日」
救世主の生涯全体が、降誕祭と復活祭の二つの圏に集約される。典礼の頂点であり、本質的な二つの時点
「聖母の死」「聖母の戴冠」、聖者伝、「最後の審判」=聖ヨハネによる黙示録の幻想は、マタイ伝福音書の記述程芸術家たちをひきつけなくなった
中世末期・・このような堅固な調和が不安と新たな本流によって攪乱される・・アッシジの聖フランチェスコ「受難」の苦悩、偽ボナヴェントウーラの『イエス・キリストの生涯についての瞑想』残酷な挿話を豊富な細部描写によって蘇らせ、悲嘆の感情がキリスト教美術の霊感の源となった
付随的モティーフに対するロマネスクな好奇心に動かされて、美術家はピトレスクな細部を新たに考案したり模倣した(p26)

以上が、エミール・マールの描く中世を、力強い美によってく組み立てている観念と事実からなる広大な体系。図像学的な事実を生活の全般的な動きから孤立させない研究方法。
この研究方法は、情景や人物、あるいは身ぶりや衣装の解釈が、写本挿絵、壁画、ステンド・グラス、貴金属工芸、彫刻、演劇、版画などのあらゆる技法の領域にどのような形で反響を及ぼすかを示している。(p27)
この方法は、これらの諸領域を互いに結びつけている関係に光を当てようと努力する。

図像学に基づいて解釈された中世美術の歴史は、異なった表現技法間の交換の歴史として、イメージ移動の場として、眺められることになった。(p28)

2 彫刻と宗教思想
―精神の系譜 幻視者と弁証家 位階の秩序としての、
現実それ自体としての自然

me 以上、アンリ・フォシヨンの「ロマネスク彫刻 形体の歴史を求めて」(辻 佐保子 訳)第一章の抜き書きと、図の検索・・・

目次

序言

一章 中世彫刻の三つの様相(p21-37)

1 彫刻と図像――叙事詩 百科全書 劇作法としての図像学
2 彫刻と宗教思想――精神の系譜 幻視者と弁証家 位階の秩序としての、現実それ自体としての自然
3 彫刻と形体学(モルフォロジー)――進化論批判 様式と様式論 経験、技法、影響の諸概念 建築における彫刻

二章 壁面彫刻の諸原則 (p39-55)

1 空間のなかの彫刻――「限定=空間」と「環境=空間」
2 形体の構造――運動 向き(プロフィル) 量体 光の構造――浮彫と肉づけ法 素材と触値
3 壁面彫刻――部分の美学と全体の美学 建造物とモニュメンタリティー 建築史に表われた構造と装飾の関係

三章 混乱(p57-73)

1 古代美術の失効――装飾文様の刷新と優位 幾何学図形主義と動物図形主義 石の頽廃
2 石造彫刻における新しい種類の試み――管状様式 フェレンティルロの「薔薇形=人間」
3 代用の素材とその石造彫刻への影響――模倣的な体験の利点と限界

四章 ヘレニズム美術の残映 アーチ列に並ぶ人物群 (p75-88)

シダマラ群のアナトリア産石棺 マクシミアヌス司教座 祭壇前面飾り(アンテペンディウム) ポワティエの浮彫 モニュメンタルな彫刻におけるアーチ列に並ぶ人物群 アーチ列の萎縮した存続 正面(ファザード)と楯(ラントー) サン・ジュニ・デ・フォンテーヌのアーチ列=人間 チヴィダーレのスタッコ

五章 準備段階の諸経験 (p89-120)

1 メソポタミア彫刻によるヘレニズム起源のテーマの変形――パルティアの柱頭 ワルカの小像 磨崖浮彫 パレスティナの装飾彫刻 連続と非連続 余白の効果 変容への指向
2 初期イスラム美術――ロマネスク美術との類縁性と矛盾 ヘレニズム起源の素材の漸次的な憔悴 充填部と空隙部に対する平等な関心 装飾的三次元とその破壊 碑文の迷路
3 人体についてのアイルランドの体験――写本挿絵における「組紐=人間」とその多様な組合せ 石造十字架の彫刻 連鎖的運動 錯覚の美学
4 カロリング美術の二方向――象牙彫刻 タブロー形式の構図 調和ある構図 トゥオティロの象牙板

六章 ロマネスク彫刻における配置と機能(p121-143)

1 造型的価値としての壁体――カロリング美術と最初のロマネスク美術における影と光 充填と空隙の関係
2 無装飾と装飾の関係――彫刻の配置の問題 アプシスと正面(ファサード) 第一の解決法――説話と組合せ 南西部におけるアーチ列による配分 宙吊りの形姿像
3 勘所の征服――機能によって指令される配置 建築的形姿像の誕生

七章 配置と機能(承前) 十一世紀におけるさまざまな探究(p145-174)

1 形姿像を伴う柱頭の構造――ローマの手法 ロマネスクの最初の手法 借物の骨組 アーチ列 折り曲げた祭壇前面飾り 左右対比の原理 角による牽引 サン・ブノワ・シュール・ロワール修道院教会玄関口の柱頭 クリュニー修道院教会内陣の柱頭
2 形姿像を表わす半円形壁面(タンパン)の構造――上端を半円にした矩形の浮彫 アラゴン地方の半円形壁面 コンポステラの説話的様式と組合せの最初の試み ミエジュヴィル扉口半円形壁面のモニュメンタルな様式

八章 変身(メタモルフォーズ)(p175-208)

1 無条件の変身――極東の大気現象 メソポタミアとイランの動物・人間 エジプト ギリシアの怪物の人間性 逆方向の変身 女面鳥(シレーヌ・ワゾー)の歴史 コプトのダフネ
2 建築における変身――人体比例のロマネスク的変型 巨人と矮人 地理的分布と模倣理論の批判 人間の尺度に対立する空間の尺度
3 非合理的尺度のその他の側面――単一的なものの破壊 中間的な空白の魅力 ゴシック美術におけるロマネスク的要素の余命

九章 運動の研究 アルベルティの窓 運動を産み出すものとしての均衡の保証 (p209-230)

1 連続的接触と一定間隔の接触――多数の接触点の法則と空間の三角形状分割 モワサックの登攀者たち スイヤックの舞踏家 軽業師(ジョングルール)たち
2 軸線に基く構図と空隙による解読――左右相称の変型 連鎖的運動の規則 閉じられた形姿像 対角線軸
3 半円形壁面(タンパン)における構図と運動――矩形パネルによる充填 複合双性半円形壁面(タンパン・ジュミネ) 迫持飾り(アルシヴォルト)式半円形壁面 ヴェズレーの扇形構図 図像と様式の葛藤――ヌィイー・アン・ドンジョンの場合

十章 中世における幾何学術 (p231-243)

1 ヴィラール・ド・オンヌクール――体系としての幾何学術 ヴィオレ・ル・デュックの解釈の批判 三角形紡錘 アイルランド方式の再利用
2 十三世紀における幾何学的思弁――ロバート・グロステスト 光の伝播 物質世界の構造としての線、角、規則的図形

十一章 浮彫と肉づけ(p245-274)

1 模倣的肉づけ――沈彫式平彫と浮彫式平彫
2 浮彫と肉づけ(モドゥレ)の相違と関連――浮彫の暗示としての、表面の活動(ジュー)としての肉づけ ラングドック地方の探究――モワサックのパネル トゥールーズの丸味ある肉づけ 管状肉づけの名残り――配置場所に準ずる浮彫と肉づけの位階(イエラルシ)
3 モワサックの中央柱(トリュモー)の分析――光線の運動 半円形壁面(タンパン) 浮彫の遠近法
4 ブルゴーニュ地方の諸手法――ヴェズレーにおける諸部分間の関係 影の三階層と浮彫の三階層
5 南・西部における彫像的本能と建築的浮彫

十二章 ロマネスク美術の終焉 (p275-305)

1 ロマネスク美術に対立する諸力――生の模倣と民衆的リアリズム 建築的遠近法に代る「本当らしさ」の遠近法 襞の新しい曲折 「部分(モルソー)」の愛好
2 サン・ドニの工房――ボーリユの芸術との対比 人像円柱(スタテュ・コロンヌ) 南方的様式の衰弱した痕跡 シャルトルの「王の扉口」とその後裔――不動の詩学 サン・ルー・ド・ノー
3 半円形壁面(タンパン)――分析的解体 適応性のない模倣 楣(まぐさ)と半円形壁面の融合 建築的様式に対立する説話的様式 遺物容器型の聖母像の象嵌 サンタンヌ扉口におけるロマネスクの最後の痕跡
4 結論――ロマネスク的アカデミズム ロマネスク的バロック

訳者あとがき

索引

ロマネスク彫刻関係地図

me

第四章 ヘレニズム美術の残影

シダマラ群のアナトリア産石棺 マクシミアヌス司教座 祭壇前面飾り(アンテペンディウム) ポワティエの浮彫 モニュメンタルな彫刻におけるアーチ列に並ぶ人物群 アーチ列の萎縮した存続 正面(ファザード)と楯(ラントー) サン・ジュニ・デ・フォンテーヌのアーチ列=人間 チヴィダーレのスタッコ

アーチ列に並ぶ人物群

ローマ帝政時代の石棺・・バッカスの行列やニオーベ一族の虐殺の場面の連続性に代わって、はっきりとリズムを刻む非連続性が目立ち始める

*2世紀後半~ メルフィフィ出土のイタリアの石棺(ナポリ国立博物館)
*3世紀初頭 シダマラ群のアナトリア産石棺(イスタンブール考古博物館


図9 死者の肖像とディオスクーロイ(p76) 
(3世紀初頭)

小円柱に寄る空間の分割
人物の頭部が同一の高さを占める(イゾセファリー)原理が目立つ

矩形状と半円状を交互に繰り返す龕の中に配される「登場人物」(ドラマテイス・ペルソナエ)
⇒「アーチ列(アーケイド)に並ぶ人像

墓(石棺)は縮小された家・・ここに見られるのは、ヘレニズム影響下にあったアジアの大邸宅に見られるファサードの一断面


図10 マクシミアヌス司教座(p77)象牙製 
洗礼者ヨハネと福音書記者他 (6世紀中頃)
ラヴェンナ大司教館美術館
(チーヴェ・ショヴィーレ博物館Museo Arcive Scovile蔵)

古代末期の彫刻の四つの状態が認められる最もすぐれた作品(複合的傑作)
・繊細な、密生した葡萄唐草文に囲まれた獅子、鹿、孔雀からなる装飾的なパネル・・シリア風の装飾様式
・キリスト伝の諸場面・・アレクサンドリア風の絵画様式、
・ヨセフ伝の場面・・エジプト起源の主題、当方諸地域の影響の衣装
・アーチ列に並ぶ人像・・便利な形式、リズムを刻む要素

http://www.ergoseating.jp/?cat=234

「マクシミアヌスの司教座」装飾に関する一考察CiNii 論文 (浅野 和生)
「キリスト教美術を楽しむ」工芸青花 (金沢百枝)
美学・美術史 授業(藤川哲)


図11 旧バーゼル大聖堂の祭壇前面飾り(コントルタープル)
(1020年説、12世紀説) パリ クリューニ―美術館

キリスト、三天使と聖ベネディクトゥス 黄金の浮彫
クリスム(キリストの頭文字の組み合わせによるもの)を彫った球を手にして祝福の手ぶりを表すキリスト、三大天使と聖ベルナルドゥスを伴う
小円柱に支えられたアーチ列に囲まれている
「マクシミアヌス主教座の人物のより干からび、やせ細ったそれほど美しくない後裔」「カタロニア祭壇に再び姿をあらわす人像の年上の兄弟」(p80)

Montmorillon. L'Octogone

Octogone portail
図12モンモリオン 八角堂(オクトゴ―ス)

正面 アーチ列に並ぶ人像
オクトゴーヌ・ド・モンモリヨン(L'Octogone de Montmorillon )仏
迫持飾りの突出しない、ブロックに刻まれた分厚いアーチ列は、これを支える台座なし
低部は龕状に歪曲している アーチは半円形に刳られた柱頭の役割

Abbaye de Saint-Génis-des-Fontaines PM 47223
図13サン・ジュニ・デ・フォンテーヌ 楣 キリスト、天子、使 徒
1021年*最古の扉口彫刻(『ロマネスクの美術』馬杉宗夫著)

正面を向き、中心軸に規制された人像を厳格に区画の中に閉じ込めて配置する便利な枠組み
フランス・ロマネスク彫刻の少なからぬ古い作品は、アーチ列に並ぶ人像の形式によって構成される
壁面にはめ込まれ、楣に配されて、後
者の方法はロマネスク時代のすべ全てを通じて愛用される 
ことに年代の古く際立った例

「エステリ・デ・カルドス( スペイン カタロニア)の祭壇前面飾りが原型であろう(byプーチ・イ・カダファルク氏)」

プーチ・イ・カダファルク(Josep Puig i Cadafalch,1876‐1956)建築家 カタルーニャ・ロマネスク建築の研究

人体の比例と輪郭の問題の考察

(サン・ジュニ・デ・フォンテーヌ 楣の考察1)

そこに人体がはめ込まれた建築的な枠に寄っていぴったりと規制されている
アーチ列に並ぶ人像は、文字通り「アーチ列=人間(オム・アルカード)」となる(p84)

これまでアーチと円柱は単に純粋な限定者、受動的な形態を表していた
ここでは受動的となり、服従するのは人体の方である 

超半円アーチとほぼ同心円状をなし、これによって首を絞められた頭部を持つサン・ジュニ・デ・フォンテーヌの「アーチ列=人間」と、フェレンティルロの「薔薇形文=人間」は同一の発展方向を、建築への順応に基礎を置く美術の強靭さを予告している

古代美術の残り屑であるアーチ列に並ぶ人像が、ごく限られた数の極めて単調な経験しか生まなかったのに対して、装飾にとって、新しく自由に利用できる可能性に富んだ建築彫刻の創案は、あらゆる種類の造形表現を生み出すことになろう

その意味で、サン・ジュニ・デ・フォンテーヌの楣浮き彫りは、同時に終わりでもあり始まりでもあったのである(p84)

襞と浮彫の解剖学的扱いの考察

(サン・ジュニ・デ・フォンテーヌ 楣の考察2)

光背を支える天使たちの曲げられた脚には、奇妙な図形、より小さな三角を中に含んだ三角形の組み合わせからなる図形が、膝の位置には円形が刻まれている
図形主義 この種の装飾法(エクリチュール)の起源とモデルについてはいずれまた

サン・ジュニの楣浮き彫りに関する限り、11世紀の初頭には、県築的¥素が
建築的要素が人像の輪郭を規制するばかりではなく、人体の全表面は幾何学図形によっって―明示されるとは言わないまでも―覆いつくされるのである。

アーチ列に並ぶ人像は互いに矛盾しない二つの経験に従属している
一方は人像と建築的要素の関係
他方は肉付けと抽象的装飾との関係に関するものである
貴重な示唆に富むとはこのことである

アーチ列に並ぶ人像は大胆な石材の扱いが最高度に達した土地にあってさえ、不変のままもちこたえた
この形式は装飾の本質的な部分ですらあった

中世初期の美術はモニュメンタルな芸術にとってやはり無効であった伝統的な要素を、これ以外にも多量に温存していた

とりわけ、チヴィダーレのストッコによる大きな人像群は、もっとも不思議な美しさをたたえている


Cividale tempietto3

図14 チヴィダーレ サンタ・マリア・イン・ヴァレ(テンピエット) 聖女
(Chiesa di Santa Maria in Valle)、通称「ロンゴバルドのテンピエット」


me 以上、アンリ・フォシヨンの「ロマネスク彫刻 形体の歴史を求めて」(辻 佐保子 訳)第四章の抜き書きと、図の検索でした。

美術史家65

イタリア人 ・ ドイツ人 ・ フランス人・ イギリス人ハインリヒ・ヴェルフリン
ドイツのヴィンケルマンヴァールブルク そしてウィーンのアロイス・リーグル

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