古代エジプトの象形文字。 聖刻文字,神聖文字ともよばれる。
きわめて具象的で,1 字 1 字の構成はエジプトの伝統的画法と完全に一致し,木面や石面に入念に彫られたり,壁画と併用された場合,その記録性とともに美的・装飾的効果をも発揮する。
生命・安定などを意味する文字は,石製,陶製,金属製などの護符ともされた。前 3100 年ころから 3000 年余の長きにわたり使用され,その後長らく死語 (または死文字) となっていたが, 1822 年フランスのJ.F.シャンポリオンによって解読された。
それには単音のもの (24 種),2 音,3 音を含むものがあるが,いずれも子音のみを表しているため,各語の発音の完全な復元は困難である。
常時用いられた文字の数は 700 ~ 800,その略書体にヒエラティック,デモティックがある。人間の動作,鳥,獣,魚などをそのまま表しているため,今日でも布地や陶磁器などの文様に用いられることが少なくない。
⇒エジプト文字
加藤 一朗
古代エジプトの葬礼文書の一つ。故王の復活と永生を助けるため,葬儀や供養の儀式の際に誦された呪文の集成で,古王国末期のピラミッド (第 5 王朝のウナス,第 6 王朝のペピ 1 世,メルエンラー 1 世,ペピ 2 世,第 8 王朝のイビ,およびペピ 2 世の 3 人の王妃のもの) の墓室壁面に刻まれたのでこの名がある。
統一されたテキストがあるわけでなく,ピラミッドごとに用いられる呪文に異同がある。現在,ドイツのエジプト学者ゼーテKurt Sethe (1869‐1934) の集成により 759 章が知られている。
文字は青色顔料で埋められ,人や動物など故王に危害を及ぼす可能性のある文字は一部分を削除して用いている。
文字体系としてはまだ完全ではない古エジプト語で記され,呪文が誦せられる儀式の詳細も不明なため解釈困難な呪文も多い。先史時代にさかのぼるとみられる呪文もあるが,大部分は古王国時代の葬祭慣行を反映している。
故王の運命についても統一ある来世観はなく,太陽神のもとへの昇天,星への仲間入り,オシリスへの変容などが混在している。呪文の多くは第 1 中間期の〈葬祭の民主化〉によって一般人にも使用可能となり,中王国時代の〈コフィン・テキスト (棺柩文) 〉,新王国時代の〈死者の書〉に借用されている。
⇒ピラミッド
屋形 禎亮
象形文字:漢字とは何か
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